知る人ぞ知る。知らない人は知らない。
カメラやレンズの購入を検討する時に「PHOTO YOBOBASHI」や「CASYAPA」といった、カメラ店が運営する作例が豊富な情報サイトや、「Flickr」や「PHOTOHITO」といった作例サイトを参照する人は多いと思います。もちろんわたしもガッツリ参照します。僕の場合、レンズなら「価格.com」で検索して「PHOTOHITOで作例を見る」をクリック、「お気に入りの多い順(全期間)」でソートして、、みたいなパターンも多いですかね。
大変便利ではあるのですが、PHOTOHITOとかFlickr、最近の人気上位の作品って、いかにも今どきな明瞭度バキバキのHDRみたいな写真ばかりになっていてちょっと食傷気味(そもそもHDRはあまり好きじゃないですし)だし、ぶっちゃけどのカメラやどのレンズでも似たような作風しか上がってこなく(下手なんじゃないですよ決して。もちろん人気上位作品はすごく上手なんです。disっているのではなく、やはり、みんなから票を集める形式だと自ずとそういう傾向になるんだな、という話)なってしまっていて、欲しい情報(作風)を発掘するのにいくらか手間がかかるようになってしまっています。
他方「PHOTO YOBOBASHI」や「CASYAPA」は、もう作風的にはわたしの好みにドンピシャですし、そもそも作例を撮っているのが手練の面々ばかりだし、眺めているだけで楽しく、サイトとしては断然に誰でも投稿できる作例サイトより好きなのですが、特定の製品シリーズを縦断的に漏れなく紹介するようなことは難しく(「特集企画」的な扱いで、たとえばPHOTO YOBOBASHIでNikon ZについてVol.1、Vol.2、と連載しているようなケースはありますが)基本的には商品単品についての単発的な紹介の集積になっているので、ラインナップの傾向や棲み分けを俯瞰で把握するのはやや難しいところもあるわけです。大好きですけどね「PHOTO YOBOBASHI」や「CASYAPA」。
フジのXシリーズなんかですと、Xフォトグラファーなんてサイトがあって、まさしくシリーズを縦断かつ国内外多彩な撮り手の作例を見ることのできるサイトがあるんですけれどね。
マイクロフォーサーズ・ユーザーで、ライカDGレンズが大好きなわたし。どこかにライカDGシリーズを縦断的にラインナップしたサイトか本がないのかなと思っていたのですが、昨年、こんな本があったのを知って速攻買いました。
「写真集」と呼べるクオリティー
これ、あくまでも「レンズ紹介の本」なんですが、作例が素晴らしくて「写真集」として楽しめます。
作家陣がすごいんです。以下、敬称略で。
水野克比古、水野秀比古、高橋真澄、海野和男、相原正明、塙 真一、HARUKI、コムロミホ、宮武健仁、上田晃司、片岡三果、深澤 武、ハービー・山口、河野英喜、佐藤仁重、新見敬子、田村 弥、森脇章彦
スナップ、ポートレート、風景、静物とジャンルも多彩で、まさしく「高水準で偏りのない横断」ライカレンズのファンや、購入を検討している人はもちろん、そうじゃない人にも見応えあると思います。
ちらっとだけ…
印刷も、良き
印刷もいいんです。紙は、ダルアートかそれ系。ちゃんとプリンティング・ディレクターがついています。よく写真の評価で「黒の締まり」という言い方を聞きますが、我々の世界では印刷でも同じ表現を用います。しっかりとインクが乗り、CMYKの掛け合わせがリッチな場合に「締まった黒」が再現できるのですが、もうこの真っ黒な表紙を見るだけで印刷の凄さも伝わってきます。元来、印画紙へのプリント、染料や顔料でのインクジェットプリント、RGBによるモニター表示に比べて、いわゆるオフセット印刷では、写真の発色は再現領域が狭くなるのが普通で、ポジを納めたカメラマンが印刷物をみてがっかり、てな話は昔からありますが、この本にせよ以前紹介したソール・ライターの写真本にせよ、腕のいい技師の手にかかった印刷物には色域再現性云々という次元を超えた心地よさがあって、わたし個人としては、写真は、額装されたプリントよりもこうして本をコーヒーなんぞ飲みつつパラパラ眺めるという鑑賞法のほうに優雅さを感じます。
今少し続きそうな外出自粛生活、読み返してみようと思います(まんまとレンズが欲しくなってしまうってのがアレなんですけどね汗)。