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【使用機材紹介(またLUMIXじゃないけれど)】取材時のマストアイテム SONY HDR-MV1

今じゃ入手困難、ニッチな「ミュージック・レコーダー」

この記事を書くにあたって、このカメラがオークション市場で今いくらくらいで取引されているかを調べてみましたら、35,000〜45,000円くらいの幅でした。一時期もっと高値だったと思いますがいかんせん2013年の商品ですから妥当なところに値落ちしている感じですかね。ただし玉数は少ないですねえ。なにしろ後継機はおろか、同じコンセプトを継承した別機種すらもうないのですから、仮にこの記事を読んで、欲しい、と思った方がいらしたとしても、もはや中古市場でたまに出品される分しか買うことができない製品ですが、僕はこれ、10年後くらいでも「あー、あったねえそんなやつ」と一部の人たちの中では語られるようなソニーらしいオンリーワン製品だと思っています。

そもそもにしてこの製品、まずもってルックスがリニアPMCレコーダーそのものだし、Webサイトの「ミュージックビデオレコーダー」というカテゴリー名や「音楽を愛するすべての人に」というキャッチコピーからもわかるように、完全に録音品質に特化した「音声レコーダー」であり、ビデオカメラ機能はあくまでオマケだったはずで、ソニー側の想定使用シーンとしてはバンドの生演奏などを(ま、一応映像つきで)撮るといったシチュエーションだろうかと思います。ところがそのオマケのビデオに、スタジオにいる全員を置きっぱなしでも撮れるようにしておかにゃというわけで120°の超広角レンズ(35mm換算で18.2mm)を採用した。何気にぬかりなくカールツァイス銘。それにより作ったソニーも想定していなかった(おそらくは)であろう用途が色々と開けることになりました。

これは凄いぞと複数のガジェット系のユーチューバーさんが熱心にレビューをあげていたのを覚えています(私もそれ見て欲しくなったわけですが)。HDR-MV1が発売になった2013年はGoProに代表される「アクションカム」が完全に市民権を獲得つつある頃で、その革新的な撮影技法と映像は多くの人に驚きを与えたわけですが、GoProの場合は逆に「音声がオマケ」だったわけですね。ガジェット系のユーチューバーさんは別にオフロードバイクで山道走ったりスカイダイビングしたりするのをヘルメットにつけたカメラでお届けするわけじゃありませんから(…する人もいるかもですけど、少なくとも瀬戸○司さんはやんないと思う)、映像と同様に、場合によってはそれ以上に音声が大切で、コンデジやミラーレスカメラを使って撮影している人の多くが外部マイクを使用していたわけです。そこに出現したこの「ミュージックビデオレコーダー」。そんじょそこらの外付マイクを凌駕するクオリティの録音が可能であることに皆が気づいた。いや皆じゃないけど気づく人は気づいた。

このマイク形状だけで「き、貴様…」ってなりますね。。

これをミュージシャンやバンドだけに使わしとくのはもったいないということで、上記の通りユーチューバーがVlogに使い始め、その後、ライターさんや記者さんが「映像付きボイスレコーダー」的な感覚で使用したレビューがWeb上にぽつぽつ現れました。

Premiere Proの最下層に敷く素材を

僕がこの機種を欲したのもどちらかというとその「映像付きボイスレコーダー」としての用途ででした。というのも2014年くらいから僕は、クライアントさんの広報マターのお仕事が増え始め、都内はもちろん全国各地での取材やインタビューに立ち会ったり記録したりする機会も出てきたのです。で、インタビューを編集した動画を納品なんてケースも出始めた。

そんな場合の撮影は、カメラマンさんに依頼もするし、自分でもミラーレスカメラを回したりもするわけですが、いろんなアングルで撮りたいから立ち位置を変えたりするわけですね。そうなるとカメラマン移動中の分は映像がなくなってしまうので、いわゆる「回しっぱなし」の固定カメラも必要になる。HDR-MV1導入前は、Canonのビデオカメラ「IVIS HF G20」にその役割を任せていました。

こんな子です。もちろんこの子も優秀なビデオカメラです。今でも現役です。ですが、ボケ味を生かしたミラーレスカメラでの撮影の、あくまで「押さえ」用のカメラとして、このビデオカメラを出張の荷物に加えるのか? 電源アダプターや延長ケーブルやマイクや、これ用の三脚も加えて持っていくのか? となった場合、どやろかと思うわけです。今後もこのブログで(おそらくしつこく何度も笑)主張しますが、旅行時や出張時(それが近郊であっても)において、荷物の、機材の軽さは正義、少なさは正義、なんです。加えていうなら音声に限っては、HDR-MV1のそれは、上の写真のIVIS HF G20 + DM-100で得られるものよりも遥かに高品質なわけです。であればもう「回しっぱなし」の部分は重量わずか140g、ポケットサイズのHDR-MV1に任そうではないかと思い、2015年くらいかな、ヤフオクで購入しました。購入後の感想としてはもう、今どきの言い方するなら「控えめに言って最高」ってやつですね。動画を作る場合はこれで押さえておいた素材を、Premiere Proのレイヤーの最下層(「VI」「A1」)にまず敷いてやればひとまず安心、無音・無映像の箇所のないベース素材ができますので、カメラマンさんや自分の撮った映像を心置きなく上位レイヤーに重ねて作品づくりに没頭していけばいいわけです。「ここ撮れてないじゃんか」という不安がなくなるってことは撮影現場でもプラスに作用します。何か凝った撮影を試みて、仮にうまくいかなかったとしてもベースはあるわけですから、思い切ったトライも可能になるのです。

ニッチ過ぎた名機の哀しみ

と、いささか興奮気味に大絶賛してきましたが…断っておきますがこのカメラ、映像については、ツァイスレンズだかなんだか知りませんけどやっぱりオマケです(笑)。映像クオリティだけで言えば、iPhoneのほうがずっといいと思います。35mm換算18.2mmの超広角が映像面のウリのHDR-MV1ですが、iPhone 11の超広角は35mm換算13mm。HDR-MV1の素晴らしさはあくまでその録音性能ですので、そこまで音質にこだわりがなければ取材であれインタビューであれiPhoneで事足りると思います。ただ、いろんなマイクを試したりピンマイクを使ったりと映像における「クリアな音質」に苦心してきた者にとっては、テーブル上にポンと置いてRECボタンを押すだけで商用に耐える音声が録画できるHDR-MV1は非常に魅力的な製品です。

同じ時期にCanonからもIVIS miniという同じコンセプトの製品がリリースされましたが、HDR-MV1もIVIS miniも極めて短命でディスコンになってしまいました。製品の素晴らしさはわかる人にはわかるのですが、いかんせんダーゲットがニッチ過ぎたんだと思います。でもこのHDR-MV1、デザイン、モノとしての面白み、そして性能について、個人的には高く評価する製品であり、今でも取材時には欠かせないアイテムですので、まだまだ大事に使っていくつもりでいます。

非圧縮リニアPCMサウンド。フルハイビジョンの動画を撮影しながら、音声の記録には音源を圧縮せず、ありのままに記録するリニアPCM録音形式を採用。

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